100 年の森構想はなぜ「どんぐり」なのか

 

 西日本は照葉樹林(葉の表面がクラクチ質に覆われているために、葉が厚く光って見えるシイ・カシ・ツバキ・クスノキなど)が
潜在植生(太古の森があればそれは、ドングリのなる樹木がほとんど)です。

 

 日本の文化は照葉樹林帯から始まったと言われていることはほとんどの人が知っています。
古代人はドングリを食料ともしてきました。
しかし、種種の開発でこれらの森は鎮守の森を残しほとんどが消滅し、
現在はその鎮守の森でさえも危機的な状態にあります。

 

 また、照葉樹林にはドングリを食べる動物が多く生息しています。
ドングリはこれらの動物の食物連鎖の底辺となっています。
つまりドングリの森は西日本の生態系を作り上げている森なのです。

 

①ドングリを直接食べる昆虫として、シギコナラゾウムシ類。葉を食べる昆虫としては沢山いますが、
蝶類ではキリシマミドリシジミ・ムラサキツバメ・ムラサキシジミなどがいます。

 

②ドングリを食べる鳥類ではカケス・ヤマガラ・アオバト・オシドリなど。

 

③ドングリを食べるほ乳類ではアカネズミ・ヒメネズミ・イノシシがいます。

 

④テン・イタチ・キツネ・フクロウ・ノスリなどがネズミ類を主食とします。
このようにドングリの森は西日本に生息する動物の基盤となる貴重なものです。

 

 また、照葉樹(ドングリ類)はスギやヒノキなどの針葉樹に比べると根を深く地中に降ろすために土地の崩壊を防ぎ、
保水力が大きいと言われています。

 

 

 「100年の森創り」をどんぐりから始めたのは上のような理由の他に、

 

①ドングリを知らない人はいない。

 

②特に子供たちに取り組んでもらいたいという気持ちが大きいので
  分かり易いドングリを入口にした。

 

③ドングリは他の樹木の種子に比べると発芽率が高く苗も作りやすい。

 

④管理がし易い。

 

 今後はタブノキやクスノキなど他の照葉樹の苗を作る必要があり、
これらを混ぜて植樹し多様性に富んだ森を創造する必要があります。
 これまでに播いたドングリは烏帽子岳ではアカガシとマテバシイ(アカガシは佐世保市では標高300m以上の場所では潜在植生)、
中央公園ではアラカシ・シリブカガシ・イチイガシ・クヌギ。

 

とりあえずドングリの森ができれば、落ち葉や土壌生物で林床が豊かになります。
そこへ鳥たちが他の樹木の種子を運んできてくれ、60年も経つと立派な森が出現するでしょう。

 

市制100周年を記念し、子供たちと一緒に自然豊かな照葉樹の森を創りましょう。